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by yasco_o

さよならチョコ

2002年2月14日バレンタインデー。大学を出た私は大量の作品と素材をすべて抱えて古びたビルに引越した。住むのは私と彼と一匹の犬。
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板チョコレートがぺちっと貼付けてあるみたいな外観で私たちはそこを「チョコレートラボラトリー」と名付けた。ぱっと見た目は立派で全面ガラス張り、でも中は増改築を何度も何度もくりかえしたような木造3階建てのオンボロビルだった。
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飛び抜けて天井の高い部屋もあれば、マルコヴィッチの部屋みたいに天井の低い部屋もある。極めつけは、高い天井の上にしか出入口のない、私たちが入れない部屋。
家賃が安いのはそこに誰か住んでるんじゃないの?なんて冷やかされたりもして。
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ろくなクリーニングもないまま引き渡されたので、自力リフォームが始まった。
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壁を塗り、床を張り、照明を新たに取付けたり。この赤い床の部屋はアトリエとなり、私の制作活動を支えてくれた。ここでいくつの作品が生まれただろう。
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一番上には屋上があった。花火を見たりお茶を飲んだり、気分転換のできる場所。
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一番気に入ってるのがリビングとして使っていたこの部屋。天井が高く大きな窓があって昼間の光は本当に美しい。「壁は黄色にしよう!」とすぐ閃いたし、床材は彼が一晩で貼付けてしまった…!天井が高いため温かい空気はすべて上に昇ってしまい、天井の扇風機は必須アイテムだったので、この部屋仕様に羽根を大きく作りかえた。
リフォームは自分たち好みにどんどん進みその生活はいつしかステイタスとなった。



今年6年目。好き放題暮らしてきたおもちゃ箱がついに悲鳴をあげた。
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今までも地震の揺れは半端なく、建物自体目視で傾いている状態だった上、窓際からの雨漏りはすでに数年前から始まっていた。大家さんに言ってもなかなか進まず、コップやバケツを置いたり障子を張り替えたりして対処していたけど、ついには部屋の中央部から漏水し始め、とうとう最上階の和室が使えなくなってしまった。
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それからというもの、雨の日には気が気でなくヒヤヒヤで家に帰り、OFFの日も工事立ち会いのため家にいなくてはならず、予定はどんどん狂っていく。さすがにストレスは積もり積もってもう限界…!ってとき、大家さんの口からぽろりと出た建て替えの話が、この住み慣れた世界を離れる最後の一押しとなった。



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新居が決まっていざ転居するまでの間、だだっぴろい空間を空っぽにするのは本当に大変だった。でもギャラリーや美術館と違って、すべてを搬出しても白い箱には戻らない。ここには私たちが住んでいたという空気、匂い、光が染みついている。空っぽになっても思い出せる懐かしい記憶。それが家なんだなぁと、すでに過去になってしまった生活を思い巡らせて泣いた。たくさんの笑いと涙と決断をくれた場所。
ありがとうチョコラボ。どうかまたあなたを好きな人に暮らしてもらえますように。

2008年12月24日クリスマスイブ、私たちは完全に新しい家に引越した。
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by yasco_o | 2008-12-24 16:00 | 住う